管理人の読書BLOG。乱読傾向過多!!来るもの拒まず手当たり次第。内容責任取れません。
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アンマーとぼくら/有川 浩

久し振りに故郷の沖縄に母に会いに帰った"ぼく"。

3日間母親に付き合うと約束して、家族の思い出の地を辿る。御嶽(うたき)や海、おかあさんとおとうさんと訪れた場所へと。

 

こんなに母親孝行な息子、30才くらいになって、長らく離れて暮らしてたとしても、いるか??と懐疑的になりつつも、ガイドをしている母親に連れられて観光地を見て回る話は、まだ1回しか沖縄に行ったことのない身としては楽しい。

母親の手作りの沖縄料理、綺麗な海の色、御嶽の神聖さ、良いな〜、また沖縄行きたいな〜、と思いながら読んでいたのだが、最後はまんまと著者に乗せられて、泣きたくなるのを懸命にこらえる羽目になった。

ああ、だからこんなにも"ぼく"はおかあさんにとても優しかったんだと納得。これは彼の後悔と感謝を込めた二人旅なのだ。

自分もいいトシだし、ある日突然、親しい身内と死に別れる可能性はとってもある。沖縄に移住(と云うか実家に帰った)彼に、ほろりとしつつも、どうせ帰るんならもっと早くすれば良かったのにと思いもする。

自分も後悔しないようにしないとなあ。

★★★★☆

浮遊霊ブラジル/津村 記久子

このタイトルの訳判らなさ。

本作は短編集で、表題作が1番面白かった。

いきなり、死んでしまった後から始まる。主人公はもちろん浮遊霊。

数年前に妻に先立たれ、特に思い残すことはないと思いきや、町内会で海外旅行初体験の人だけ集まってアラン諸島に行くことになっていたのが心残りとなっていた次第。

幽霊と云えど浮遊しているだけなので、このまま浮遊していけばいつかはアラン諸島に行けるかもしれないが、延々大海原を浮遊していくのはツラいと主人公が取った道は、アラン諸島に行きそうな人を見つけて憑りつくこと。

そうして憑りつきながら辿り着いたのは、何故かブラジル。

憑りついた人の生活を覗きながら飄々と浮遊霊を続ける主人公の語りも面白いし、憑りついた青年の決意と行動によってほんわかする結末もまた良い。

『地獄』は死んで地獄に落ちた女性の話。地獄と云っても生前にそこまで悪いことをした訳でなく、物語を消費しすぎた罪(本の読みすぎとか)で結末を破られた本を何十冊も読まされるとか云う類の罰を延々与えられると云うもので、監督する鬼はやたら人間臭く、とにかく全体的に皆飄々してるのだ。

なんとなく著者の本は読まないで来たが、語り口が結構好きだなあと思った。

★★★☆☆

失われた地図/恩田 陸

『蜜蜂と遠雷』を読んだばかりで続いてまた恩田作品。そしてものすごくがっかり。

『夜のピクニック』等の文芸作品もあるけれど、基本は不思議ものを書く著者であることは知っているが、読んでいて時間の無駄感が半端なく、結末だけちら読みして読了した。

各地の裂け目から現れる異形を人知れず斃す一族の連作集で、そんな設定は漫画やアニメでいろいろあるので、何故今更こんな話をって感じがする。一族や斃す敵について、本作は詳しく語らない。そう云うものだ、と云う流れで持っていくのかなあと判らないまま読んでいくのだが、主要登場人物がどうにも漫画チックで興ざめする。極端に無口な青年とか、頭を結い上げてカンザシで止めてる男性とか、耳の痛みで異形の気配を察知するとか、オカマチックな大阪人とか、好きな人は好きかも知れないがなんかイライラする。『蜜蜂と遠雷』に力を入れすぎて、軽い作品が書きたくなったのかなあ。装丁とタイトルは内容に偽り有って感じ。

☆☆☆☆☆

幻庵 上・下/百田 尚樹
百田 尚樹
文藝春秋
(2016-12-31)

江戸時代、延々と続く囲碁の話。

本因坊の名に、『ヒカルの碁』を思い出した。あの話は本因坊秀策と云う天才棋士が取り上げられたが、本作ではずうっと下って下巻の後半で出てくる。つまりこの本は江戸時代初期、徳川によって設けられた4つの家元(本因坊、井上、安井、林)が競い合って技を極めていく様を描いている。

その中で中心となっているのは、井上家11世となった井上幻庵因碩(げんなんいんせき)。

生まれた家柄や、長男か次男かで将来が定められる時代、才能によって将軍の前に出ることさえ可能なのが棋士。主人公幻庵もまた、才能を認められ井上家を継ぐこととなる。

残念なのは、現在にも残る有名な棋譜が何枚も載っており、それらの説明がされていても、超初歩的なルールしか知らないので、何がどうすごいのか全然判らないこと。切迫した勝負の雰囲気は伝わってきても、肝心の中身が判らないのはちょっとつまらないなと思った。

★★★★☆

ハリー・ポッターと呪いの子/J.K.ローリング他

ハリー・ポッター最終巻から年月を経て、次の世代の物語が演劇となって帰ってきた。

そのシナリオブックが本作。

本編は図書館から借りて読んでいたので、巻から巻まで年月が空いて細かい内容うろ覚え状態だったから、最後の方では筋を追うのが精一杯。いきなり数十年後で子供が出来て終わったのに呆気にとられたことだけ覚えている。

その状態でこの本を読んで果たして面白いのかと不安だったが、そんなのは杞憂だった。

すっごく面白かった。

シナリオ本なんて読みづらいかと思いきや、むしろ本編より読みやすいくらい。地の文で状況説明が出来ないから、判りやすく的確なセリフで物語を作らなくてはいけない制約が物語の質を高めたのか。作者が複数いて、それぞれの頭で練り上げて作ったからかも。
ハリー・ポッターの次男、アルバスと、ドラコの息子スコーピウスの友情がまた良い。正直なところ、私はハリーはあまり好きではなかったので(設定的に)、父親が超有名人なだけで当人はごく普通の少年なアルバスにすごく共感したし、その彼がやっぱり普通の少年(よりハンデを持ってる)のスコーピウスとごく自然に友情を結ぶのがとっても心温まる。

一方大人達の方。自分の息子がドラコの息子と友達になるのを許せないハリーや、病弱な妻や息子を心底心配するドラコなど、彼らもあれから変わっていったんだなあとしみじみ思った。物語は過去へと戻り、懐かしの重要キャラが登場するサービスもありながら、それがこじつけでなく物語として成り立ってるのが上手い。

演劇版ハリー・ポッターなんて、どれだけ商業主義なんだと思ったものだが、この本を読んで、演劇版を見たくなった。

★★★★★

蜜蜂と遠雷/恩田 陸

漸く話題作を読むことが出来た。

ピアノコンクールを題材にした本作、音楽の描写が素晴らしいと聞いていた通り、読んでいて音楽が聞きたくて聞きたくて仕方なくなった。

スター・ウォーズを連想させると云うプロコフィエフのコンチェルト3番

鍵盤を「弾く」のではなく「叩く」であると思わせるバルトークのソナタ80番

華やかなシューマンのノヴェレッテン

多幸感溢れた煌びやかなドビュッシーの喜びの島

屋外を感じさせるバルトークのピアノ協奏曲3番

『のだめカンタービレ』みたいに、掲載された音楽をCDにまとめて売ったら絶対売れると思うし、ぜひ聞きたい。聞いてからもう1回本作を読みたい。この本を読むと音楽の素晴らしさが直球で伝わってくる。

 

内容の方は、ピアノコンクールの参加者達が幾つかの予選から本選へと戦っていく様を描いもの。

突如現れた天才少年(養蜂を営む父と共に普段は放浪生活を送っている)、母の死をきっかけに表舞台から遠ざかった元・天才少女、著名な演奏家の弟子、普通の会社員となったものの最後に1回だけとしてコンクールの参加を決めた男性、等。

私としてはやはり、どんなに上手くともピアノの世界においては凡人としてしかなり得なかった彼に1番感情移入した。ピアノの音には人柄が出ると云う。明るくて優しいと云う彼の音楽がどんなものなのぜひ聞きたい。

『のだめカンタービレ』でもコンクールに参加する描写が出てくるが、漫画では表し切れない部分が小説では語られる。例えば参加者が変わる毎にその希望に応じて調律を行なう点や、次の参加者を舞台に送り出す際、どれだけの思いを込めて声をかけるか等。

審査員や、本選で参加者と共に演奏するオーケストラ、どの人達も音楽がものすごく好きでいろんな思いを込めて関わっているんだなと云うのがよく判った。

音楽にしろミュージカルにしろ、自分は好きな作品はあれど好きな奏者や役者はない。作品が主体であって、誰が演じても関係ないと思っていたのだが、本作でなんとなく判ってきた気がする。

★★★★★

コンテクスト・オブ・ザ・デッド/羽田 圭介

使い古された感のあるゾンビだが、描き方次第でここまで読ませられるんだと感心した。

昔ゾンビ映画がやたら流行った頃のお約束を逆手に取り、現代日本のゾンビパニックものに仕上げたのが本作。だか日本だと見るからにパニックと云ったふうにはならないんだな。混乱はしてもそれなりに秩序を保っているのは国民性の違いか時代の違いか。

ある日突然東京の街中で現れた1体のゾンビから始まった事件は、意外な原因が判明する。

つまりこれまでみたいな細菌兵器とか伝染病ではなく、主体性の有無と云う人間性の部分に原因があったと云うあたりが面白い……のだが、最後の方はちょっとだらだらした感じで読むのがしんどくなってきた。1番最初に真相に近付いた墓地組(?)がゾンビを御するのに失敗して破綻するあたりとか、ちょっとよく判らなかったし、北海道組の対決もよく判らなかった。封鎖されてるはずなのに何故本州から駆け付けられるんだ…。

読む方が疲れて途中ざー読みになったから理解し切れなかっただけだろか。

自分の意見ではなく、他人のレビューを見てから感想を書くのは云々の一文が結構耳に痛かったりして。

★★★★☆

明るい夜に出かけて/佐藤 多佳子

マラソンもの『一瞬の風になれ』がとても良かったものの、その後ご縁ないままだったのが、書評で名前を見かけて読んでみた。

主人公は大学休学中の男子学生。その一人称でずらずら綴られるのは、社会人歴ン十年にもなると結構読むのがツラい。

スマホの影響で短文を貫く書き方が今は主流になってるそうで、それはそれで雰囲気が伝わってくるが、結構なページ数なので文体に慣れて勢いに乗るまでに時間がかかった。

接触恐怖症(特に女性)の主人公が、1年限定の休学と一人暮らしの中で人と触れ合わずに済むコンビニの深夜バイトを始め、バイトの先輩や高校時代の腐れ縁の同級生、そして大ファンのラジオ番組の"職人"と知り合い渋々ながら付き合ううちに、何かがなんとなく変わっていく。

書かれているラジオ番組は実際のもので、著者もファンだと云うだけあって描写が超リアル。だからこそ主人公の個性(職人としてラジオ番組に投稿を重ね、好きな番組は録音して聞き返し、どの回に何が話されていたかもきっちり把握)が明確に伝わってくる。つまり作者さんもヘビーユーザーなんだろうか。

正直なところ、主人公の思考回路は自分にはちょっと軽薄に思えてあまり好きではない…と思ったのだが、偶然に次ぐ偶然で4人組が形成され(てしまっ)た後、つるむのを嫌がりながらもバイト先の先輩の演奏活動に関わったり、女子高生ラジオ職人の、学生としての生活に関わり始めたり、いつしかそこに居場所を得ていた主人公に、ほっと安心感を覚えたりした。

多分、大人になったらまた少しずつばらばらになったりするんだろうなと大人歴ン年ともなると思うのだが……。若いって良いなあ。

★★★☆☆

新 怖い絵/中野 京子
中野 京子
KADOKAWA/角川書店
(2016-07-30)

思ってた以上に面白かった。

後書きに"『怖い絵』のコンセプトは、端的に言えば絵を「読む」ということです。"とある通り、絵に描かれているものや描かれていない額の外のことを読み解いていく本。

私は美術館に行った時は、音声ガイドは借りずに展示品の札だけ読んで鑑賞する。

まっさらな状態で向き合い、感覚的に絵を捉えるべきと云うのが自分の美学だったのだけど、この本を読んで認識を改めた。

例えば『オフィーリア』は、モデルは画家の恋人で、実際に風呂桶にお湯を張って浮いた状態で描いたが、お湯が水になっても画家の集中力を切らせたくなくて我慢したので健康を害した、とか、長い期間同じ場所で風景を描いたので、描かれた花々は季節がバラバラだとか。

なくても十分絵の美しさは伝わるけれど、描かれた事情を知ることでより楽しめた。

本作はNHKのテレビ番組が元になっていたそうで、見ておけばよかったなとちょっぴり後悔。

★★★★★

夜行/森見 登美彦
森見 登美彦
小学館
(2016-10-25)

理屈派なせいか、不条理ものや明確な結論が出ない作品は苦手。

初めて読んだ著者の本『きつねのはなし』はだから良さが全然判らなかった。

今回の本はその系統なので、ちゃんと読めるか心配だったのだけれど、読み終わってみれば妙に引かれる作品であった。

10年前、鞍馬の火祭見物中に失踪した1人の女性。残された仲間達が再び鞍馬の火祭に集う。

その夜、各々が語る旅の話は、全てに銅板画家の連作『夜行』が絡んでいた。

作品に描かれている顔のない女性は、失踪した彼女なのか、それとも?

『夜行』と、誰も知らない対になっているという連作『曙光』。終わらない夜と1度きりの朝に"私"が紛れ込んでしまう下りはかなりドキドキした。

それにしても、最初に語られる『夜行―尾道』が印象強くて、今ものすごく尾道に行きたい。

『曙光』の世界で銅板画家が語った妻との出会いの場も尾道。

著者は京都を主な舞台に作品を書いているが、尾道にも京都と同じ空気を覚えてるのかも知れない。それくらい描写が細やか。

★★★★☆