管理人の読書BLOG。乱読傾向過多!!来るもの拒まず手当たり次第。内容責任取れません。
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鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。/川上 和人

鳥類学者のエッセイ(?)。

この人を知ったのは本作が最初だが、結構前から著作がいろいろ出ていたらしい。

文体はヒネクレ系で、どくとるマンボウを懐かしく思い出した。キング張りに小ネタがちりばめられ、判らん人には判らんだろうが、年代的に自分はどんぴしゃなので判ってしまうあたり親近感。

内容は、タイトルが全てを物語っていて、ムツゴロウ的生き物賛歌なところは一切ない。もちろん動物に関わっていれば環境保護等の問題に直面したりするが、孤島に上陸する為の体力を懸命につけたり、国際会議で英会話力のなさに四苦八苦したりと、鳥類学者は一つの職業に過ぎないのだと認識させられた。

★★★★☆

ふたりからひとり/つばた 英子,つばた しゅういち

いつかはこんな日が来るとは思っていたが、なんかこうやるせない気分になる。

著者は、名古屋近辺で自ら建てた木製の平屋に住む90才のご夫婦。

お湯の出ない台所で自分達で育てた野菜や果物を使って食事を作り、作れるものは自分達で作って生活している。

自然や植物が好きな自分としてはとても憧れる生活を実現されているお二人なのだが、トシがトシだけにいつかはと思っていたら、ついにご主人が亡くなられた。

御主人のいた頃、御主人が亡くなられた頃のインタビューを起こしたのが本作で、1番に気になっていたことが書かれていて安心した。一人になった奥様の元に娘さんが頻繁に訪れていること、数年後にはその家に娘さん一家が住む予定であること、御主人は普段通りの生活の中で、ちょっとベッドに横なっているうちに天に召されたこと。

前に読んだ本はご夫婦の送る日常生活に焦点が当たっていたのに対し、本作はインタビューだけあってもっと個人的なところに焦点が当たっていた。

入院先からいきなり「明日退院する」と云って退院したり、入院中朝から夕方まで奥さんに来てもらっていたり、意外とご主人、手がかかる人だったんだなと思ったし、奥さんは良いところ(造り酒屋)のお嬢さんで、結婚して夫に仕えるのが当然と云う人生観をお持ちだけど、ご主人のわがまま(?)をはいはいと受け入れて流すおおらかさや強さがある人だなと思ったし。

奥さんの穏やかな日々がこれからも続きますようにと心から願います。

★★★★★

姉・米原万理 思い出は食欲と共に/井上 ゆり

ロシア語通訳の第一人者・米原万理を知ったのは日経新聞連載のエッセイだ。

歯切れのいい文体と欧州各地を舞台にした内容が気に入って、読んで夢中になった。

いつかまとめて読みたいなと思ってたのだけど、ある日新聞で亡くなられたことを知り驚愕した。あれから10年経ったとは…。

本作は3歳下の妹が主に食にまつわる姉の思い出を書いたエッセイ。姉のエッセイが引用されていて、それがとても面白かったので今度購入するつもりだが、共産党員の父に連れられ家族で移住したプラハでソビエト学校に通うという幼少時代の特別さに、ロシア語通訳と云う少々主流から外れたものに進んだ理由がよく判った。

最後の方でハルヴァと云うお菓子が出てくる。

姉のエッセイの中で紹介された、思い出に残る最も美味しいお菓子だそうで、読んでいて実物を見たくなりインターネットで調べたら出てくる出てくる。米原万理の愛したお菓子として超有名で、トルコ・ロシア・ウズベキスタン・インド・イラン・ギリシャ等各地でいろんなバージョンのがある模様。イギリス・ロシア・ドイツ等耳馴染みの国とは違うラインナップにちょっとびっくり。これだけでも著者姉妹の思い出の特別さに感心する。

でも1番印象に残ったのはあとがきに書かれていた言葉。

姉の書いた作品で出てくる子供時代の親友から、姉の本を読んだ人が訪ねてきたと連絡があった。亡くなって10年経ってもいまだ姉の書いたものが人を動かし続けていると云うことに驚かされ、この本を書き始めた云々。

言葉の力、文字の力って本当に、確かにすごいものだ。

★★★★★

少年の名はジルベール/竹宮 惠子

竹宮惠子と云えば、個人的にはたまたま少女コミックで連載しているのを読んだ『イズァローン伝説』の方が印象強いのだが、代表作は『風と木の詩』。

それを生み出すまでの当時の事情を語ったのが本作。

『風と木の詩』は読んだ覚えはあるものの、最後どうなったのか全く思い出せない。正直なところ、あまり好きなタイプの話ではないなあと若かりし頃は思った。

なので作品に思い入れはないけれど、若い漫画家が本心から描きたいものの為に一所懸命に動く青春ものとして本作はとても面白く読んだ。

萩尾望都と知り合って一緒に借りて住んだ家が、漫画家や読者、編集者が集うトキワ荘の女性版みたいになったり、作品に反映させる為に、お金をかき集めて思い切ってヨーロッパに旅立ったり。そして着々と世間に認められていく萩尾望都に対する羨望、それが高まった末に決意した別居。

自分が書きたいものが少女漫画の枠組みに収まらないと編集者からダメ出しされ続ける日々。それでも描きたくて、新しい担当編集者から1位を取る作品を書けたら掲載すると云われ、努力を重ね続けてついに連載許可が下りた『風と木の詩』…。

例えば、漫画家と読者の距離が近くて、手紙やサイン会を通じて仲良くなったりとか、少しでも安くヨーロッパを見て廻る為に分厚い時刻表を入手して移動計画に頭を捻り、現地ではじかに見る建物や通りの雰囲気に興奮したりとか、女性向きの作品を男性の編集者の審査を通ってしか発表出来ない矛盾とかに『時代』を感じるし、同人誌やweb掲載等、今でこそなんでも出来る表現の自由が当時はなかったこと、書きたいものを書く為に著者がまずは人気の出る漫画作りに取り組み、じっくり実力を付けた上でやっと夢を叶えた下りは、この本そのものが1つの作品みたいだった。

萩尾望都との関係については、どちらも現役の漫画家(それも超有名)であることを考えると、ものすごく正直に、素直に書かれていて、こんなに率直に書いてて大丈夫なのかと心配になるほど。たまたま最近、萩尾望都の特集雑誌を見かけて、インタビュー記事の当時の回想部分を立ち読みしたのだが、竹宮恵子との同居や関係の当たりはあっけないくらいさらりと流されていて、これが一方はいろいろと思うところがあったとしても相手にもあるとは限らないと云う意味なのか、確執がありすぎてスルーしただけなのか不明。

★★★★☆

あの日/小保方 晴子

一連のSTAP細胞事件の終盤、ついに当事者の本が出た。

前に取材する側の本を読んだが、同じ事件が当事者側からだとどうなるのか非常に関心を持って読んだ。しかし、化学系にとことん弱い上に、前回読んだ本から1年以上、事件そのものからは2〜3年経っており、かなり内容を忘れてしまっていて、読み切るのにえらく時間がかかってしまった。

前半はSTAP細胞発表までの研究時代の話で、この感想のカテゴリーをノンフィクションでなくエッセイにした理由でもあるのだが、読んでる限りではごく普通の化学者の卵にしか見えなかった。最後の章では博士論文に不備があったとして早稲田大学から再提出を求められたものの、実際には"博士号剥奪"に向けての形だけの指導に過ぎず、結局なすすべもなく研究生活を閉ざされて終わる。

『公聴会以前の博士論文の草稿が、最終的な完成版の博士論文として誤って製本された』のは不注意以外の何物でもなく、写真の切り貼りにしろ、研究に使用した細胞の管理しろ、杜撰にも程がある。ただ、コピーを繰り返しているうちに最終完成版でなくうっかり途中段階のものを提出してしまうのは職場の同僚も時々やらかしてるのを見るし、何万もの学生の中で彼女だけがやらかしたとは到底思えない。同学年の学生論文を洗いざらいチェックしたら、同じミスをしてる学生が絶対いるに決まっている。そのあたりが、臭いものにはフタ、出る杭は打たれる、もしくは著者が男だったらここまでバッシングは受けないだろうと思えてしまう。アンチジャニーズよりAKBバッシングの方が激しいのと同じような感じだ。

それとマスコミの人権無視の取材態度にびっくりだ。セキュリティ管理のマンションの中まで入ってきて、外出すればトイレのドアの前まで追いかける。本人のみならず家族にもだ。前に読んだ須田桃子『捏造の科学者 STAP細胞事件』では冷静な取材をしているように思えたが、今作で須田記者からメールが送りつけられ「返事が頂けないなら肯定と解釈します」と一方的に宣言されるあたりを読むと、いきなりメールを送り付けてきて、返事を返して当然と云う態度はどうなんだと思えてくる。

微に入り細に入り書かれるマスコミ取材の様子を、悲劇のヒロインぶって自己憐憫ばかり書いてると酷評するレビュワーもいるようだが、自分は普通にヒドいと思ったし、こんな日常が続けば笹井氏が自殺するのも無理もないと思ったし、だったら当事者・小保方氏が精神的に不安定になって病院通いをするのも仕方ないと感じた。……やっぱり出る杭じゃないのかこれは。

本作では細胞学の知識のないものにも判りやすいように説明しており助かった。

初期(受精卵)の細胞は体のどんな細胞にもなれる多能性を持っており、細胞分裂を繰り返して特定の機能を持つ細胞に変化する(分化)。その現象を解除することを細胞の初期化と云い、どんな細胞にもなれる状態を未分化と云う。

分化した細胞→細胞を初期化→初期化された細胞を改めて分化。これらを実験で検証していくのだが、初期化までが著者、細分化(キメラマウスの作成)を若山氏が担当したと云う。

研究の主体は若山氏が受け持っており自分が判ろうはずがない、一連の事件(?)の犯人は若山氏だと著者は主張する。一方マスコミ他は、発見されたのはES細胞であり、ES細胞を混入したのは小保方氏だと主張するのだが、果たしてまだ若い科学者の工作にベテラン科学者がうっかり騙され、長い期間研究員総動員で研究し続けたりするものだろうか? それはあまりに情けなくないか。

無責任な個人的感覚で云うなら、悪意を持って発見を捏造したものはいないのではないかと思う。

そもそもの論文発表に至るまで、論文の著者の順番に揉めたりなんだりする過程を読むと、科学者と云え人間、注目されたい、認められたいと云った欲があるのだなと思った。論文を書くにしても、言い回しを変える、意に沿わない結果は伏せる、等、色々なテクを使用する(小保方氏だけがでなく、論文執筆に関わった者みな多かれ少なかれ)。そして事件(?)発覚後は、若山氏が自己保身に走る様子が書かれている(これは会見や記事が残ってるだろうから事実だろう)。

STAP細胞のあるなしは科学者が実験で検証しないと判らないと思う(行なった人物や使用した水のメーカー等、細かな違いで結果が変わってしまうそうだ)。

証明する為の実験の過程において、細かく記録を残すことを怠ったことが事態を大きくしてしまった一因ではないかと思う。

★★★☆☆

FU-KOさん家の小さなくふう、ていねいな毎日の作り方/美濃羽 まゆみ
京都の古い長屋に暮らすFU-KOさんのエッセイ。
タイトルそのまま、なんて丁寧に暮らしてるんだろう。
24時間のタイムスケジュールを見ても、無駄時間が1つもなくてびっくりする。仕事して(洋服の自作販売)、かつ子供の為におやつを作ったりして、さらに少々不便であろうとも昔からのものを使って暮らす。
余程意識が高くないと出来ないんじゃないか。
自分には絶対無理だと自覚してるから羨ましい。
★★★★☆
やくみつるの秘境漫遊記/やくみつる
『オール読物』に2005年から10年に渡って連載した見開きマンガ旅行記が、漸く1冊分貯まって1冊の本に。
夫婦で訪れた国は100近いそうで、アジアでは、ラオスでカエルを食べたり、トルクメニスタンで炎のクレーターを見たり(「不謹慎ながら〜〜〜正直念じた。ひとりくらい地獄に堕ちろ!!」に笑った)、イエメンの砂漠地帯の名産が蜂蜜である謎に迫ったり、アフリカでは、ルワンダでゴリラを見に行ったり、ナイジェリアのオルモ岩と云う岩山にエレベーターを使わずに苦労して登った話とか、選挙で盛り上がるガーナで与党押しの人はプッシュ!プッシュ!の動作、変革を求める野党はチェンジのクルクル動作をすることを紹介したり、中南米では、エクアドルで「クイ」と呼ばれるネズミを食べたり(鶏とほとんど変わらない味らしい)、スリナムの小汚い食堂で食べたポテトフライにはまった話を告白したり、他にもオイミヤコンでマイナス50度生活を初体験したり、ラトヴィアでボブスレーしたり。ボブスレーに安全ベルトも掴むところもないなんて初めて知った。
これまで何冊か読んだ経験では、コミック旅行記は絵と白い背景で話を引き延ばしてる感じであまり面白くない。それがこの本はすごく面白い。行先が様々な上に、どの国も2〜6Pくらいに面白い部分を凝縮してて無駄な部分がない。さすが10年の重みはスゴい。
にしても、これだけの旅行に行ける財力と時間があること、サバイバルにちゃんと付き合う奥さんにびっくりだ。
★★★★★
猟師の肉は腐らない/小泉 武夫
うっかり騙されたorz
云わずと知れた食の冒険家、東京農業大・小泉教授の本とくればエッセイと思いきや、実はこの方、小説も書かれるのだ。
つまりこの本は小説。ノンフィクション。云われてみれば主人公"俺"の本名がちらりと出てきたような気が。そもそも新聞広告に"小説"って書いてたような気が。

"俺"が福島・茨城・栃木の県境にある八溝山地から出てきた義っしゃんと知り合ったのは、新宿のとある居酒屋。
思いがけない場所で何度も遭遇した義っしゃんが故郷に戻ったと知った"俺"は、誘いを受けて八溝・阿武隈の義っしゃんの山小屋を訪ねる。
昔からの猟師の知恵、自然に向き合った生活にいたく感銘を受けた先生は、その夏数日間滞在し、さらに冬にも山小屋を訪ね、山の恵みと危険を体験する。
クマと名付けられた猟犬と2人で暮らす義っしゃんは、半ば自給自足。畑を作り、兎やイノシシを狩り、ドジョウを取り、地蜂の巣を掘り、木々の繊維から紙餅なる非常食を作ったり、果ては濁酒や酢まで作ってしまう。
おかしいなあと思ったのは、義っしゃんから「法律違反だから内緒」として教えてもらった酒造りの洞窟について、本に書いてしまったら法律違反バレバレじゃんって突っ込みたくなった時。
それにイノシシにやられて深く傷付いたクマが、いつの間にやら小屋を抜け出し、敵に一矢報いるのも、えらく都合の良い展開だなあと思った部分。
そしたらやっぱりそうか…。
ただ、自然の暮らしの楽しい部分、動植物等山の恵みを頂く食卓や、辛い部分、毒蛇に噛まれたりイノシシに襲われたとしても、助けを呼べるものなく全て自分で解決しなくてはいけない点がとてもよく描けていると思った。
義っしゃんは、著者にとっての憧れの猟師の姿なんだろうなあ。
どうせだったらほんとに猟師さんと暮らしたエッセイ読みたいなあ。
★★★★☆
壇蜜日記/壇 蜜
(失礼ながら)意外と頭が良いと聞いてはいたけれど、この本で得心がいった。
自分はあまりテレビを見ないので、動いている著者を見たのは数回ぽっきりだが、頭の中でこんなこと考えてるのかと思うと、やっぱり意外に思いつつ、でもあの独特の口調と云い態度と云い、なんとなく判る気もする。
本作は著者の日記である。
1日分は1行から10行くらいしかない。
でもユーモアがあり、センスがあり、本業を知らなかったら作家としてかなり好きな部類だ。
判る人には判る小ネタっぽい文章もあり、日記じゃなくてちゃんとしたエッセイが読みたいと思った。
自分の読んだ本の範囲内で云えば、綿矢りさに似てる。
あの人も、まったりお嬢様っぽい感じがするのに、最近読売で見かけるエッセイを読むと、意外と冷静で鋭い発言をする。
こう云う文体に弱いんだよなあ、自分は。
★★★☆☆
皿の中に、イタリア/内田 洋子
本屋でぱらぱらとめくって、面白そうだと思って図書館で借りた本。
これは久々の大ヒット。内容も文体もすごく自分好み。
イタリア在住の著者の食にまつわるエッセイなのだが、著者のごく普通の日常における話なので、読んでいると食と云うよりイタリアと云う国にすごく魅了されてしまった。
例えば著者は小説の題材の為に、毎週金曜に市場で店を開く魚屋三兄弟のところに赴くのだが、無口で無愛想な彼らと話すきっかけを見つけられず、焦って大量の魚介を買い込んでしまう。その魚介を消費する為に開く食事会で出会った友人知人、そのまた友人達の話が面白い。イタリア人気質か芸術家の常か、初対面でも仲良く食卓を囲み、彼らの交流はその後も続く。変わった石を掘り続ける彫刻家や、海水生物専門の写真家等、著者の出会う人々は個性豊かだ。
そしてそんな日々の中、件の三兄弟は徐々に著者に打ち解けていき、時に魚料理の相談に乗ったりもするようになる。
私は著者の作品が大変気に入ったのでアマゾンで調べてみたものの、エッセイって文庫化作品が少ないんだなあ。
ハードカバーを買うのは財政上苦しい為、少々悩んでいる。
★★★★★