管理人の読書BLOG。乱読傾向過多!!来るもの拒まず手当たり次第。内容責任取れません。
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ハリー・ポッターと呪いの子/J.K.ローリング他

ハリー・ポッター最終巻から年月を経て、次の世代の物語が演劇となって帰ってきた。

そのシナリオブックが本作。

本編は図書館から借りて読んでいたので、巻から巻まで年月が空いて細かい内容うろ覚え状態だったから、最後の方では筋を追うのが精一杯。いきなり数十年後で子供が出来て終わったのに呆気にとられたことだけ覚えている。

その状態でこの本を読んで果たして面白いのかと不安だったが、そんなのは杞憂だった。

すっごく面白かった。

シナリオ本なんて読みづらいかと思いきや、むしろ本編より読みやすいくらい。地の文で状況説明が出来ないから、判りやすく的確なセリフで物語を作らなくてはいけない制約が物語の質を高めたのか。作者が複数いて、それぞれの頭で練り上げて作ったからかも。
ハリー・ポッターの次男、アルバスと、ドラコの息子スコーピウスの友情がまた良い。正直なところ、私はハリーはあまり好きではなかったので(設定的に)、父親が超有名人なだけで当人はごく普通の少年なアルバスにすごく共感したし、その彼がやっぱり普通の少年(よりハンデを持ってる)のスコーピウスとごく自然に友情を結ぶのがとっても心温まる。

一方大人達の方。自分の息子がドラコの息子と友達になるのを許せないハリーや、病弱な妻や息子を心底心配するドラコなど、彼らもあれから変わっていったんだなあとしみじみ思った。物語は過去へと戻り、懐かしの重要キャラが登場するサービスもありながら、それがこじつけでなく物語として成り立ってるのが上手い。

演劇版ハリー・ポッターなんて、どれだけ商業主義なんだと思ったものだが、この本を読んで、演劇版を見たくなった。

★★★★★

ミスター・メルセデス 上・下/スティーヴン・キング

スティーヴン・キング初の推理もの。

どんなものだろうと思いつつ読んだが、キングはキングだった。不思議な現象を描いたとしても、執拗な迄に日常を丹念に書き綴るスタイルには元々サスペンス的な要素があるので、初めてのジャンルと云っても違和感がない。つまり面白い。

定年退職後、生きがいを失い毎日家にこもって過ごしている元刑事の元に、1通の手紙が届く。その送り主は、現役時代に検挙出来ないままに終わった事件、盗んだメルセデスで見ず知らずの人々をひき殺した犯人だと自称。経験でこの手紙が本物であると確信した彼は、捕まえるチャンスだと行動を開始する。

追う側と追われる側の両サイドから交互に描いており、どちらの側を読んでも面白い。キング作品は時に血も涙もない結末を迎えることがあるが、本作はかなり穏やかな方。ちゃんとハッピー・エンドを迎えて安心した。犬がなんともなくて良かった(個人的に)。

定年退職した刑事、庭仕事を頼んでいる縁から友人となった黒人の男子高校生、依頼人の従妹である40代女性の組み合わせが良い。年齢も立場も全く違うのに、気持ちが通じ合い、事件の後は良き友として付き合い始める。

この作品、後書きによるとシリーズ化したそうな。

多分キングも書いててこの3人が気に入ったんだろうな。これは続きがものすごく見たい。

★★★★★

忘れられた巨人/カズオ イシグロ
カズオ イシグロ
早川書房
(2015-05-01)

著者の本を読むのは『わたしを離さないで』に続いて2回目。
前回も近未来ものだったのが、今回は中世を舞台にしたファンタジーっぽいものだったので意表を突かれた。後書きによると、著者は作品ごとに世界観を変える作家らしい。
アーサー王の時代。村に住むブリテン人の老夫婦が、長年離れて暮らしている息子に会う為に旅立つ。
頼りになるのは自らの足のみ。鬼が出る危険な道を、年老いた二人は互いに「アクセル」「お姫様」と声を掛け合い、いたわり合いながらゆっくりと歩む。途中で立ち寄ったサクソン人の村で、戦士と少年の連れを得たり、アーサー王の命を受けて世界を彷徨う騎士に出会ったりする中で、夫婦はある真実を知る。
この世界では、一匹の雌竜が吐く忘却の霧のせいで、人々の記憶がところどころに欠けている。
記憶を取り戻すには雌竜を殺さなくてはいけないが、記憶が戻れば1つの村に共存するブリテン人とサクソン人が反目し合うようになるかもしれない。
旅の中でふとした瞬間に思い浮かぶ不穏な"記憶"に、アクセルとベアトリスの夫婦は内心おびえながらも、真実を知ることを望む。

数日間に渡ってつらつら読んでしまって失敗した。
面白い本だったのだから一気に読むべきだった。やっぱり読書は勢いだ。
若い主人公が多い中で、ちょっと珍しい高齢の主人公。自分がトシ食ってきたせいで10代バリバリの主人公よりやはり相応の年の主人公に感情移入するようになってきた。
長年連れ添ってきた夫婦はとても愛し合っているのだが、旅をするうちに忘れていた記憶の断片を取り戻し始める。自分が何を忘れているか知りたい思いと、知ってしまったら今の愛情が失われてしまうかもしれない怯えが2人を苛む。
この物語は竜が倒されブリテン人とサクソン人の争いが起きる予兆を漂わせながら、息子が住む島に渡る場面で幕を閉じてしまうので、そこのところがすごく知りたいのに…!と読んでて歯噛みしたくなる。
どんな過去があろうとも、積み重ねた歳月と愛情が変えられるのだと強く信じたい。
★★★★★
ドクター・スリープ/スティーヴン・キング
あの『シャイニング』のまさかの続編が登場。
これは何が何でも見なくては!と思い手に取ったら、予想以上の出来栄えで、睡眠不足の日が続くことになってしまった。
後もうちょっと、後もうちょっとと寝るのを惜しんで読みふけったのは久し振り。
本作は、シャイニング="かがやき"を持つ少年ダニーのその後を描いたもの。
びっくりしたのは、あの恐怖から母と共に逃げ延びたダニーが、父と同様アルコール中毒者として放浪の日々を送るようになっていたこと。"かがやき"を持つことに苦しみと恐怖を抱いていたダニーは酒に逃避し、一番の理解者・ハローランとも袂を分かってしまっていたのもショック。
そんな彼、ダンが、とある街で生活を始める。禁酒会に入り、ホスピスで働き始めた彼は、死に向かう患者を穏やかに導く力を発揮し、ドクター・スリープと密かに呼ばれ始める。
そして近くの町では、アブラと云う名の少女が誕生する。この少女はダン以上の"かがやき"を秘めていた。
一方、遠い地では"かがやき"を持つ子供を殺害し、命気を吸い取る一族が旅を続けていた。より大きな力を持つ子供を求めて。

悪と善(完全な善とは限らないが)の闘いを描くのはキング作品では定番。
なのに飽きさせずに読ませるあたりがキングのすごいところ。
なんとなく、昔の作品より結末が優しくなったのは、キングも年老いてきたからだろうか。『ザ・スタンド』にしろ『IT』にしろ、読者がたっぷり感情移入した人物であっても幸せな結末を迎えるとは限らないのがキング作品。
今回の作品は悪が滅び、ダンも幸せになるし、読後感が良いので読んでて安心。そして闘いの後、ダニーにとって泣きたくなるくらい嬉しい出来事も。
ダンとアブラの交流も微笑ましい。強い"かがやき"を持つ者に初めて出会ったことに、お互い救われる様に、読んでて嬉しくなる。
文庫化したら絶対買う。
★★★★★
カッコウの呼び声 上・下 私立探偵コーモラン・ストライク/ロバート・ガルブレイス
ハリー・ポッターの著者J・K・ローリングが別名で出版していたのを、担当弁護士が知人に漏らして情報が拡散し、マスコミ沙汰になって著者大激怒。問題の著作は一気に売り上げが伸びてアマゾン在庫切れ。
そんないわくつきの作品がついに和訳された。
今時、私立探偵なんて、浮気調査ならまだしも殺人事件の調査なんていくらイギリスでもあまり活躍の場はないんじゃないか。そう少々胡散臭く読み始めたものの、『ハリー・ポッターの作者』を念頭に入れて読むと、驚くほどちゃんと探偵ものになっている。むしろハリー・ポッターよりこっちの方が良いんじゃないかと思うくらい。
片足を失い退軍したのち探偵事務所を開いたコーモラン・ストライクは、最近恋人と別れて事務所に寝泊まりする日々。
手違いで雇うことになった派遣秘書ロビンの前では、家がないことや金銭に困っていることを隠しており、ロビンの方でも気付かないふりをして微妙な距離を保っている。
そんな事務所にやってきた人物(子供時代のストライクの友人の兄)が依頼したのは、スーパーモデルの妹・ルーラの転落死が自殺ではないと証明すること。
ロビンの機転に時に助けられつつ、ストライクはルーラの仕事や複雑な私生活における人間関係を丹念に紐解き、真相を究明していく。
有名人の息子と云うストライク自身の生い立ちの複雑さや、婚約したてのロビンの私生活も絡めて、今後シリーズが進むにつれて面白くなっていきそうな予感。
ストライクそのものはカネなし家なし彼女なしの魅力ない男と描きながらも何故かスーパーモデルと一夜を過ごすことになったり、なんか疑問な展開もあるが、取り合えず2作目は読んでみたい。
今回の作品はハリー・ポッターと訳者が違い、池田真紀子は『検死官スカーペッタ・シリーズ』パトリシア・コーンウェルを訳してる人。この作品が結構面白かったのは、訳者の力量にもよるところもあるのかも。
★★★★☆
かもめのジョナサン 完成版/リチャード・バック 訳・五木寛之
リチャード バック,ラッセル マンソン
新潮社
(2014-06-30)

名作『かもめのジョナサン』に最終章が追加され、完成版としてリリース。訳者は前回同様、五木寛之。
確か前作も読んだはずだが、仲間に異端扱いされながらもひたすら飛ぶことを続ける部分は覚えてるのだが、その後どうなったかが記憶にない。同じ訳者とは云え、時が経てば解釈も変わるし、両者を比べてみれば面白いだろうなあと思えど読み直すのも面倒くさい。
【第1章】
カモメ達が水面上で魚の頭をただ追い回しているのを良しとせず、ジョナサンは飛ぶことにひたすら邁進する。仲間達に飛ぶことを極める喜びを伝えようにも異端扱いされ、一羽崖に追いやられたジョナサンは、黙々と飛行技術を極め続ける。数年後、光り輝く二羽のカモメに導かれ、ジョナサンは空の彼方へと飛び去って行った。
【第2章】
別世界の海岸へと降り立ったジョナサンは師と巡り会い、一段階上がったさらなる訓練を続けた結果、瞬間移動の術さえ手に入れる。もしも残してきた世界に飛ぶことを愛するかもめが一羽でもいるならば、己の得た技術を何分の一かでも教えてやりたいと願うジョナサンはついに元の世界へ戻っていく。
【第3章】
元の世界に戻ったジョナサンは荒っぽい若いかもめフレッチャーに根気よく技術を教え続ける。ひたすら飛翔に打ち込み続けることが自らを見つけることに繋がるのだと教えてジョナサンは飛び去り、残されたフレッチャーは今度は自ら若いかもめ達を教え導くこととなる。
【第4章】
時が流れ、かもめ達も代替わりしていく。最初の1羽ジョナサンはもちろん、フレッチャーを始めとするその弟子達も神格化され、飛ぶことの意味が崩れ去っていく。そしてジョナサンの教えは単なる儀式と化した。
しかしその中から1羽、かつてのジョナサンのように飛びたいと願うものが出てきた。その前に一羽のかもめが姿を現す。

この本は物語ではなく『ソフィーの世界』のような初心者向け啓発書もしくは哲学書になるのだろう。特に第3章まで読むとその色合いが強く感じられる。でも4章が追加されることで、自分の内面の話から世界の話に広がったような感じがする。
でも正直云うと、簡潔な言葉を使った訳は好印象だけど、読み直したい作品とは思わないなあ。
★★★☆☆
11/22/63 上・下/スティーヴン・キング
スティーヴン キング
文藝春秋
(2013-09-13)

久し振りのスティーヴン・キング。
内面含めた細かい描写が延々続く文体は、作品世界に入り込むまでかなり読むパワーいるが、今回読みやすかったのは、珍しく一人称だったからかも。それと未来から振り返る書き方なので、取り合えず本人は生きてると云う安心感もある。キングの大作は、肩入れしてた人物が死んでしまう展開が普通にあるからな。
驚いたのはテーマがタイムトラベルで、目的が歴史改変なこと。
タイムトラベルものなんて小説・コミック・アニメ・映画でいろいろ出ているし、今更?って感じ。ただマイクル・クライトンも1回やってるし、ベテランでも一度はやってみたい題材なのかもしれない。
しかし、読んでみるとものすごく面白かった。さすがキング! 今更?なんて思わせないストーリー展開で、最後の最後まで引き込まれた。自分的キング作品ナンバー1の『IT』もだが、話の中核部分が決着を見ても、そこで終わらず、その後どうなったかまでをしっかり描き切るところがキングのすごいところだ。
表題の数字は、自分が日本人だからか見てもピンとこないけれど、ケネディ暗殺の日時。
1958年の決まった日時にだけ行き来出来る穴を通り抜け、"ぼく"はガンで幾ばくも無い友の最後の願いを受けて過去の世界に旅立った。目的は、1963年のケネディ暗殺を阻止すること。この出来事を防ぐことが出来れば、世界はより良いものとなるのではないかと云う希望を持って。
過去に戻ったと云っても過去の出来事全てを知っている訳はなく、1958年から1963年までの5年間、"ぼく"は友人から教えられていたスポーツの勝敗を元に賭け事で稼ぐ以外に、普通に働き、町の人達と関係を築き始める。だが友人たちに自分の過去を偽ること、暗殺の日が来た後のことを考え思い悩むようになる。そして1963年が近づいてくる。
最後の最後の最後まで話が転がり続け、本当に最後のページで少しだけ救われたのが本当に良かった。
★★★★★
インフェルノ 上・下/ダン・ブラウン
ラングドンシリーズ第4作。
実のところ超ベストセラー『ダ・ヴィンチ・コード』はあまり面白くなくて、なんで皆が絶賛するのか判らなかった。美術品や象徴の説明を読んでもピンとこず、単なるこじつけにしか思えなかったのに、世間一般では評価が高くて映画化までされている。自分の理解力が劣ってるんだろうかと内心忸怩たる思いがあったのだけど、いつも図書館の返却期限に急かされるように読んでいるのを、今回は開き直ってじっくり時間をかけて読んだからだろうか。理解出来、且つ面白いと漸く思った。
まず、病院で目覚めたラングドンの記憶が、1、2日分なくなっているところから始まると云うのが意表が付いている。何故自分がアメリカでなくフィレンツェにいるのかも判らないし、何故病院に、しかも頭部を撃たれたのかも判らない。そこに突然銃を持った女が乱入し、ラングドンは女性医師シエナと共に病室から逃げ出すことになる。
なくした記憶の手掛かりは、服の隠しポケットに入っていたダンテ『神曲』をテーマにした著名な絵画。それは何らかの意図を持って元絵に手を加えられていた。
ラングドンの逃避行に"大機構"なる組織やWHOが絡み、物語は思いがけなく人口増加問題にまで発展。科学者ゾブリストが生み出した生殖機能を奪うウイルスの発動を防ぐ為に、敵味方団結する怒涛の展開は、なんとほんの2~3日の出来事。
本気でウイルスを発動させたいなら、わざわざ象徴や芸術に絡めた謎々など作らないで、黙って発動させれば良いのに、なんて思ったらいけないんだろうなあ。
地球上の貧困・食糧危機を解決するには人口を減らすしかないと云う犯人の理由は、なんと成功してしまうあたり、「ええ!?いいの!?」と読んでて焦ってしまった。最後の最後まで緊迫感漂う話だったので、シリーズの中ではこれが1番好きかも。
★★★★☆
青い鳥/メーテルリンク 訳・江國香織

江國香織が子供向けと大人向けの2種類の翻訳を出したと聞いて読んでみた。

まずは子供向け(小学中級)。

クリスマスプレゼント用に先月児童書をあれこれ見繕ったのだが、その観点からすればこの本も良かったなあと思った。

『青い鳥』と云えば、チルチルとミチルが青い鳥を探して旅をし、見つけられないまま戻った家の中で青い鳥を見つけると云う話。青い鳥=幸福はすぐ側にあったんだね、と云う道徳的な物語が、その道徳さを感じずにただただ良い話だなあと思えたのは、翻訳が良いからか読み手の心境が変わったせいか。

物の見方を変える力を持つダイヤモンドを使って、チルチルは(ミチルは驚くほどに"いる"だけ)"光"に従っていろんな場所の2つの姿を見ていくのだが、幸福の館を訪れる話にしんみりした。

この世の大きな贅沢達が食べたり飲んだりしている館は、ダイヤモンドの力で一転し、チルチルの家にいるたくさん幸福達と大きな喜び達が姿を見せる。"両親を愛すると云う幸福"や"健康でいるという幸福"、"ただ存在すると云う大きな喜び""善い存在であるという大きな喜び"等々…。

そして最後に走ってやってくるのは"母の愛の比類なき喜び"。母親だよと云われても、自分の母より綺麗すぎるし話し方も違うとピンとこないチルチルだけど、普段は忙しすぎてゆっくり接する時間が取れなくても、母親の愛はどんどん強く若く幸福になっていくし、子供達さえいてくれれば母親は皆豊かなのだとと説明されてついに納得する。

こう書けば単なる道徳だけど、"母の愛の比類なき喜び"の言葉は読んでいて、ああ良いなあと思えるもので、むしろ子供より大人の方がよりじんとくるかも知れない。

この本だって十分大人の鑑賞に耐えると思うが、大人向けがどんなものになっているのか読むのが楽しみ。

★★★★☆

絹の家/アンソニー・ホロヴィッツ

これはかなり面白かった。
イギリスのシャーロック・ホームズ協会が唯一公認したホームズもの長編で、期待以上の出来に文庫化したら買おうかと一瞬思ったほど。買うと断言しないのは、やはりいくらホームズものとして出来が良くても本物とは違うから。
他作家が書いたホームズものは以前にも読んだことがあるが、著者らしい文体で書かれたそれらのホームズものと違い、今回の本はさすがの公式認定だけあって、コナン・ドイルの未公開作品が発見されましたと云われたら本気にしてしまうシロモノ。夢中になって繰り返しホームズものを読みふけったのは中学生の頃で、本棚の奥から当時の文庫を出してきて読み直したい衝動に駆られた。著者自身、当時の文体でホームズの世界を壊さないように書くと心に留めながら執筆したらしい。その努力を大いに讃えたい。
妻が友人宅に行っている間、以前のようにホームズと共に暮らしていたワトスン。そこにホームズを訪ねてきた依頼人の美術商は、商売に絡む恨みと復讐で命を狙われていると云う。さっそく行動を開始するホームズだが、調査の為に動員したベーカー街不正規隊の一人が無残な死を遂げた。その手に絹の白いリボンを巻きつけられた状態で…。
美術商を付け狙う男と、ベーカー街不正規体の少年の死、絹のリボンの意味する"ハウス・オブ・シルク"はどう繋がり合うのか。謎を追い精力的に行動するホームズだが、何者かの陰謀により殺人の罪を着せられ投獄されてしまう。

"絹の家"の結末については少々今時のあざとさを感じられるが、ホームズとワトスンの友情や、レストレイド警部やハドスン婦人と云うお馴染みの人々の登場がえらく嬉しい。

本の最後に、現在の人権擁護からは不適切と思われる表現があると云う断りの文面がある。
云われてみれば阿片窟とかせむしとか、そんな単語がホームズものにはいっぱい出てくる。そんな言葉の数々が上流社会と下流層が断絶する霧の渦巻くロンドンの独特の雰囲気を伝え、ホームズものの魅力を深めていると思うのだが、今時は差別用語で切り捨てられていくんだなあと時代の変化を改めて実感。
★★★★★