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J. K. ローリング
静山社
(2004-09-01)
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ハリー・ポッター・シリーズと云えば、1冊が1学年分なので展開も早く、次から次へと出来事が起こり極めて映画的。だが本作でのハリーは5年生(15歳)。これまでよりも精神面が複雑になってきているので、上下組このボリュームになるのも当然だろう。実際、かなり読み応えのある作品に仕上がっていて、子供向けの枠から今作で初めて外れたように思う。これまで半ば読み捨ててきたが、この本は読んでいて本当に面白いと思った。先が気になってひたすら読み続けた。
5年生になったハリーはこれまでのハリーとは少し違う。『名前を云ってはいけないあの人』の手から逃れ生き残った男の子、いわゆる英雄なんかじゃない。関心を持たれない事に腹を立てたり、親友たるロンやハーマイオニーに当たったり、寮の監督生になれなかった事で複雑な感情を抱いたり、そして恋もする。これまでよりずっと普通の男の子らしい。
ハリーがスネイプの記憶を覗いてしまう場面が印象に残った。今のハリーと同じ15歳位の父が、公衆の面前でスネイプを辱める場面。心の中で美化されていた父の生身の姿を見てハリーは大きなショックを受ける。そして出会った時から憎み続けていたスネイプを、これまでのように純粋に憎む事が出来なくなる。
ただひたすら父を尊敬しスネイプを憎む単純さはもうハリーにはない。
そしてハリーにとって大きな悲しみが起こってしまう。それも八割方自分のせいで。
全7巻で終わる(予定)シリーズ、残りの2冊がとても楽しみ。