管理人の読書BLOG。乱読傾向過多!!来るもの拒まず手当たり次第。内容責任取れません。
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わたしを離さないで/カズオ・イシグロ
カズオ イシグロ
早川書房
(2006-04-22)

英国で評価が高いと、近頃とみに名を聞くので読んでみたかった。原文は英語で本書はその和訳。その為か、文章は判りやすく簡潔で素朴な程。それともこれは訳者の力量? 主人公"わたし"キャシーの丁寧な言葉遣いがこの作品の雰囲気を柔らかくしている。
優秀な介護人として評価されている"わたし"は、"提供者"たちの世話を仕事としている。その中には自分の育った施設ヘールシャム時代の友人達も含まれていた。介護人としての仕事をもうすぐ終える時、キャシーはこれまでのことを振り返る。幼年時代の頃、ヘールシャムから巣立った時のこと、そしてその頃の友人、ルースやトミー達との再会。
記憶の中に自然に挟みこまれる"提供者""保護官"と云った単語には何の説明もないまま、ごく普通の青春小説として物語は綴られていく。友情、諍い、恋、将来の夢、次第にキャシー達の境遇が明らかにされていく。
ネタを明かせば"わたし"達は、実は人体移植用に育てられている人間で、必要な際には外の人間達に自らの臓器を提供しなければならない。キャシーもまた、今は臓器を提供した仲間達の世話を仕事としているが、自らも機会があれば臓器を提供しなければならない。こういうネタは前からコミックでは結構目にするし、最近も映画で似たようなのがあったと思う。けれどこの作品の特徴は、人体移植を批判している訳ではないところだ。
彼らは猶予を求めて実際にはない夢を追うが、運命には抗わない。"提供"は彼らの中では"決まってしまっていること"なのである。その前提において彼らは彼らなりの普通の人生を送っている。勿論先のない未来への葛藤はあるのだが、はたから見れば絶望しか感じない境遇にも関わらず、キャシーの語り口は淡々としていて静かだ。その静かさがこの作品の良さだと思う。
…でもこの作品、やっぱり十代こそ読むべき作品だなあ…。
★★★★☆
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